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晴彫雨読No.31 石の夢

 石を語るとき、商売を通して身につけた知識だけでは語れない時がある。石屋の独断はむしろ石に対する偏見ではないかと思わされる本に時々、遭遇する。

 今回は、仕事の片時に是非読んでいただきたい本をご紹介する。特に石に対する感性を養いたいと思っている若い方にお薦め。石や大地あるいは樹木や風や雲など、言葉なき「もの」の世界との交感によって、世界の真実を見究めようとする詩人、宇佐見英治氏の魂の結晶ともいうべき「石の夢」がそれである。著者略歴を参照すると1918年生まれ、東京大学文学部卒、明治大学名誉教授となっている。

 ちょっと疲れたとき、何かに癒されたいと思ったとき、サテイやキースジャレットのピアノに耳を傾けてみる。時にはグラビア印刷の鉱物写真集を広げてみる。言葉で満たされようと思ったら、さしずめ本書であろう。深い認識と幅広い想像力に満ちた詩人の言葉や文章は、透明な輝きを帯びながら、私たちの感覚の扉を押し開き、言葉なき世界へ導いてくれる。

 さて、中身であるが、著者の興味と知識は実に幅広い。「石の夢」のタイトル通り、本書の守備範囲は石や鉱物または岩石に限定したもので構成されているが、著者の知性や見識が随所にちりばめられ、高質の精神世界へと読者をひきずりこむ。たとえば、根府川や小松の石切場では森鴎外やダビンチの言葉に思いを馳せ、毛越寺の礎石を前にしてモーツァルトの調べや李白の名句を引用し、といった次第。他にも一乗谷遺跡、安土城の石垣、玄武洞等々、そのときどきに古今東西の知性を用い、著者の石への思いは、心地よく文中に漂う。改めて、様々な人々がそれらに魅せられ、多くの文学や美術の世界のなかで息づいていることに気づかされ、石の世界に浸っている一人として、安堵感を感じさせる好書である。

 著者の素直な石に対する感性は、きっと石の商品漬けに喘いでいるわれわれ石屋には、あまりにも漠然として、受け入れる余裕などないかも知れない。ただ、彼の石に対する感性は、多くの人々は、詩人のように表現できないまでも、人間とし大いに共感できるものがあるのではないかと思う。

 混迷深まる業界にあって、出口が見えてこない。あくせくせずに、こんな所まで立ち返って、石に対する思いをめぐらしてみるのも、たまには良いかも。

本のデータ
書籍名/石の夢(1994年)
著 者/宇佐見英治 著
体 裁/A6版 330ページ 価格2900円
発行所/筑摩書房 TEL 048−651−0053



 石の本リスト
 晴彫雨読 No.1-20
 晴彫雨読 No.21-40
  No.21 インド巡礼の道
  No.22 写真でわかる謎への道...
  No.23 南イタリア 石のすまい
  No.24 巨石文化の謎
  No.25 石に聴く 石を彫る
  No.26 日本石仏辞典
  No.27 新・石の文明と科学
  No.28 石仏と石塔
  No.29 聖なる石に出会う旅
  No.30 石臼の謎
  No.31 石の夢
  No.32 ミステリーストーン
  No.33 石と建築
  No.34 墓と石塔
  No.35 石屋の小僧が彫刻家に...
  No.36 石−伝説と信仰
  No.37 石の表情
  No.38 石の街並と地域デザイン
  No.39 石の星座
  No.40 アンコールの神々

 晴彫雨読 No.41-60

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